ガーベラを貴方に   

「はぁぁぁ・・・俺なにやってんだろ?なんで??今日も・・・はぁぁぁぁ」

小テスト受けてがっくり落ち込んで寮に帰ってきた。
自信はあったのに、感情こめれず指が鍵盤の上を滑っただけで終わった。
もちろん自分で分かってるってことは教授にはお見通しで
最後まで弾くことなくストップかけられて終了・・・・

『ショパン:ピアノソナタ2番第一楽章』
曲はいまの俺の実力なら弾く事はたやすい。
でも弾き手の感情がなけりゃただのBGMで終わる。
悲恋?愛って何?恋って何?
この感情が乗せれない。いいや、乗せれないのではなく、乗せるのが怖い。
そうだ。
俺の悲恋が蘇ってきて泣いてしまう。弾く事が出来なくなるからだ。

高校に入ってすぐの頃。
恋をした。初めての本気の恋。
そして初めての失恋。いや失恋以前に恋にもならなかった言ったほうが
いいだろうか。
好きだと告げる事も叶わず、誰に相談することもなく時とともに
記憶の奥に消し去った悲しい辛い恋心。
その重荷のせいで次の恋にはまだ巡り合えていない。

大学生になり友人から彼女を紹介してもらうが続かない。
友達以上の関係にならないからだ。
リードもできるし、愛想も悪くないはずだ。なのにいつも彼女から

『ねえ。誰を思ってるの?心の奥に秘めてる想い、私あてじゃないでしょ?』

このセリフを言われたら愕然としてしまってもう彼女をリードする事は出来なくなる。
親に見放された子供みたいに固まってしまうんだ。
少なくとも彼女と居る時はその事は忘れてるはずなのになんでだ??
そんなこんなで恋人はいない。友人は男女問わずいるけど・・・

俺の人生ずっとこれなのかな?
卒業までにテストに合格してウィーンに行きたい。
大好きなウィーンでモーツアルトの軌跡を辿りながらピアノを弾きたい。
なのにこの様だ。チケットは2枚しかないのに。


翌日も学校へ行きピアノに向かう。
惰性で弾くこの曲。
「乙女の祈り」
女性的な曲だけど指の慣らしに俺はこれを使う。
綺麗な曲なのに何故か俺は泣いてる。
封印した思い。もう封印が限界なのだろうか。
命を得たように想いが暴れて起き上がり俺の心から出ようとしている。
駄目だ、絶対にダメなんだ。
俺の封印は解いちゃだめなんだ。
そんな思いで弾いていたらある視線を感じた。
そっと振り返ったら。。。


「ゆちょん。。迎えに来たよ」


身長も体格も大人の君。
でも誰かなんてすぐに分かる君。
俺が恋したあの頃の面影がそのままの君。
でもなんでだろう、見えないや。
君と俺の間に雨が降ってるのかな?ぼやけて見えないよ。
ゆっくり近づいてきた君。

そっとそっと鍵盤に載せている俺の手の上から
君が手を載せて奏でる和音。
その二つの手に雨が降ってきた。
低い位置からと高い位置から二つの雨のしずく。


ガーベラの花束をピアノの上の置いて君は言った。

ガーベラを貴方に捧げます。
封印した思い解き放してあげて。
僕とやり直そう。いいや、今から新しく始めよう。
一緒にウィーンに行くよ。
もう離してあげないから。僕の大事な大事な君を・・・・


FIN


 

「君」はあえて特定しませんでした。
好きな方を当て嵌めてください。

ガーベラの花言葉は色々ありますが
私は「希望、前進」を込めました。
スポンサーサイト

0 Comments

Leave a comment