ふたつの瞳  前編



俺には人には見えないものが見えたり聞こえたりすることがある。

大人になった今はその能力をコントロールしてるし、年とともに能力は

衰えてきてるのか、悩ませることもなくなった。

それでもたまに、強いパワーと遭遇すると数日は寝込むほど疲れるんだ。

最初にこの能力に気付いたのは俺がまだ・・・・小学生のころだった。




俺は2人兄弟。
2つ下の弟と同じ部屋だった頃のことだ。
俺が小学4年生、弟は2年生。
新居に越してきて父方のおじいちゃんとおばあちゃんと同居を始めた。
同居と同時に今までの家になかった「仏壇」とやらも鎮座することになる。
おばあちゃんが信心深く、朝に夕にご先祖様にお経を唱えていたので
俺は覚えてしまい、何故か一緒に唱える毎日・・・・変な子だと親は思ったみたいだ。

ある夜、2段ベットの上が俺の寝場所。
普通年下の弟が上だろうが、うちの場合弟はいわゆる「肥満児」でおれよりも10kg体重は
重く、二段ベットがギシギシと鳴るので怖くて俺は下で落ち落ち寝てられないって
訴えて上下が入れ替わった。
弟は俺には頭が上がらないから文句も言わず下で寝てくれた。

いつもベットに入ってもすぐに寝れる弟と違って俺は寝付きが悪く
30分以上眼がさえてる日が毎日だった。
羊なんていくら数えても寝れるもんじゃないってことは実証済みで
こっそりとコミックを持ち込んで読む毎日。
その時窓に何か影が映った気がした。
その日は月が雲に隠れてて表の街灯がやたらと明るかったのだが
窓に映ったのは白い布のようなもの。
ベランダから洗濯物が舞い込んだのかと思ったので
気にもせずコミックを読み進めていたら今度は天井の角に女性の姿を見た。

普通ならびっくりするか、失神するか、発狂するか・・・・ま、ともかく驚くのが
最もだろうけど、俺はなぜか冷静で声をかけてしまったんだ。

「どこから入った??だれ??」ってね。

素っ頓狂な俺の声にびっくりしたのは相手のほうで、まさか見えてると思わなかったらしい。

それから2人で会話した。
会話と言っても言葉を発するのは俺だけ。
彼女の声は俺の頭に直接語りかけてくるんだ。
体はなぜか動かなくていわゆる「金縛り」状態だったけど不思議に怖くなかった。
彼女はこの世に未練があって去りがたい。
誰かに慰めてもらいたいってさまよっていたらしい。
そして波長の合う俺を見つけて、今晩だけそばで泣いて夜が明ける前に
旅立とうと思って入ってきたそうだ。
まさか俺が見えるとは知らずにだ。

寝不足で翌朝、弟にたたき起こされて昨夜のことを聞いてみたが、彼は熟睡していて
何も知らないとのこと。あたりまえだよなぁ・・・・

この事があってから色々と見える事が分かったんだ。
見えるだけで何かしら危害を加えてくる事はないし、こっちからもアプローチしなければ
会話も成立しないので「ただ見てるだけ」を通した。

でもこの能力のせいで行けない場所が増えた。
いわゆる心霊スポットだ。
そういう所は大体がまがいものだけど、たまに本当に霊が棲みついている所もある。
高校生になり、デートでお化け屋敷に行ったときには大変だった。
迷い込んだ霊が入り込んじゃってて、見えるわ見えるわ。。。。いらっしゃいませ状態。
彼女と「きゃーーー」とか言って楽しむところの状態ではなくなった。
多すぎてうざい!!一気に話掛けるなっつうの。
お盆時期はもっとだ。
帰省ラッシュ同様だ。昨年になくなった清い霊が里帰りするもんだから
霊さまも大渋滞です。
行きも帰りもラッシュにかかってたまに帰りそびれる霊もいて。

高校のころ同級生のじゅんすに一度この能力の事を話した事があった。
なぜ彼に??
うん。彼は他の友達と違って、なんでも疑わず信じてくれるいいやつだ。
この能力も馬鹿にもせず、笑いもせず真剣に聞いてくれた。
でも。。さすがに現実離れしてるのと、彼はクリスチャンだから
怖がりもせず、「今度見えたらその時に教えてよ、挨拶ぐらいするから!」って
言われた。

そのチャンスがやっと来た。
大学生になりじゅんすと後輩のチャンミンを俺の愛車に載せて
走っていた時、町で有名な心霊スポットを通る道を選択してしまったいた。
回避することもできるが倍以上の大周りをすることになるので
意を決して突入した。
ゴルフ場の合間を道路が貫通してるんだが、この道は霊が出没するという
噂のあるスポットだ。
それもあながち嘘ではなく、何人も見てるというお墨付きの場所。
日が暮れる前に通過したかったのに、ここに来る前のふもとで渋滞にかかり
すっかり日が落ちてしまい周りは街灯だけ。
ゴルフ場もクローズしてるので真っ暗だ。
じゅんすセレクトの訳のわからない音楽を大音量に流して通過しようとした時にやっぱり来た。

助手席にチャンミンが乗って後部座席の真ん中にじゅんすが1人で大きく座っていた。
ルームミラー越しに見たら・・・
あははは!!じゅんすやぁ。。隣にきれいな女性が座ってるよ。
お前の肩にもたれかかってるけど重くないか???

ちゃんみんが何か感じたのか、手にしていたハンバーガーを落っことした。

「お!!俺と意識を共有出来る友に巡り合えたかも?」って喜んだが

『おっとと。。バーガーとナゲットはいっぺんに持てないですねぇ。。惜しいなぁ。
共食いしたかったのに。。。ぶつぶつ』


「はぁ…・共食いって、別々に食ったほうがうまいだろうがっ。」

チャンミンは何も感じてなかった。
じゅんすには前に言われてたから路肩に車を止めて報告した。

「じゅんす。。右隣に今まさに、霊がいるよ。
お前の肩にもたれかかって寛いでるけど、感じないか??」

「「ええええええ!!どこどこ??」」

『じゅんすひょん、、1人しか見えないですけど?重いですか?』

『いやぁ。。。。。なにも感じないけど。もしもし?どなたかおられますか?』

おい!見えないのになんで話しかけてるんだよお。
霊がびっくりしてるよ。

「霊がびっくりしてるよ。
この二人には見えないけど俺には見えてますよ。どうして現れたんですか?
成仏出来てないの?このままはつらいでしょ」

『ゆちょにひょん?何言ってるんですか?霊と会話してます?
マジ怖いんですけど。最強でもこれはきついです』

『ゆちょなぁ。。まだいる??俺にとり付かない様に言ってくれよ』

彼女は彼氏に裏切られて自殺した霊。
彼氏とデートで訪れた場所をさまよってるって。
ここはたくさんの同じような霊が居るので寂しくないといって
居付いてるらしい。
でもこのままだとだめなのは自覚してるが、彼が忘れられなくて動けないでいるらしい。
彼女の気持ちを聞くとしばらくドライブに同行させてくれという。
その間に思いを封じ込めて旅立つ用意をするから。。

それを2人に話すと、怖いんだろうけど「嫌です」という言葉を発するのはもっと恐怖だと思い
首を縦に振るだけで了承を得た。
しばらく俺達の行く方角で同乗していた。
その間ずっとじゅんすにもたれかかっていたが、じゅんすは金縛りのようになり
微動だにしなかった。
それをチラ見する俺とチャンミン。彼女は窓の外を見たり、じゅんすに甘えたりと
自由に動いてるが銅像のように動かないじゅんすを見て俺は笑いが抑えられなかった。
急に笑い出した俺にちゃんみんが言葉を発した。それも一生の不覚と言える言葉を・・・・

「ぎゃあああ!!なんですかっ!怖いじゃないですかっ!おっっ・・・・うぐっ・・・ひぃぃぃx」と。

その声にびっくりしたのはじゅんすと彼女。

彼女がくすくすと笑いだし、じゅんすは豆鉄砲食らったハトみたいに口を開けては閉じての繰り返し。
俺はチャンミンの顔がおかしくておかしくて、大笑いしてしまった。
瞬間左わき腹に、ものすごい衝撃で肘鉄を食らって悶絶した。

後ろではじゅんすが見えもしない彼女に話しかけていた。
それを前の2人は耳を澄まして聞くことにした。

「今の聞いた?聞こえたよね?あのチャンミンが悲鳴だよぉ。
一生分の弱み握れてもう、今ホクホクだよ。あいつさぁ、いつも僕のこと馬鹿にするんだ。
僕のほうが年上なのに偉そうーにするから、一度ぎゃふんと言わせたかった。
あああああ!今の録音しておくんだったなぁ。そう思わない??」

ぶはっ!!
俺が噴き出したから彼女が目をまん丸くして話しかけてきた。

ーーーこのかわいい彼がかわいそうですね。いつも馬鹿にされてるんですか?
    彼は優しい心の持ち主のようで私は癒されました。
    彼には感謝をお伝えください。最後に笑えて幸せに旅立ちます。さようならーーー


「じゅんす!彼女がありがとうって。お前に癒されたから旅立てるってもう出たよ。
 リラックスしていいぞ。横にはもう居ないから」

『はぁぁぁ。。。もう僕体が固まってる。誰か動かして。足も腕も自分で動かせない。
ちゃんみん、こっちきて僕を寝かせてくれよぉ』


『なんでですか!このぼくがあなたの言いなりになるもんですかっ<(`^´)>』


『あーーーいいんだぁ。。ふーーん、いいんだぁーー。
 さっきの悲鳴のことジェジュヒョンに今すぐに報告しちゃおっと。
 きっと喜ぶよな。えーーーーーと。。ジェジュヒョンの番号は???ピポッ』

がしっ!

『どーーーん。。ほらっ、動いたでしょ。端に寄ってください。ほれほれほれ!邪魔だっ』


『痛いなぁ、、もっと優しく動かせよ。何だよぉもう!ゆちょなぁ。。ジェジュヒョンに連絡してよ。
僕の事迎えにマンションの下まで来てって』


「分かったよぉ。もうすぐ着くから着いてからでいいだろ?なっ!」

じゅんすとジェジュヒョンは同じマンションに住んでるからこういう時は都合がいいけど
大抵飲んだくれだから当てにはならない。
きっと今晩もチャンミンが引きずって上がっていくんだろうけど。

マンションまでの間、見えはしないけど本当に実体験した2人に信用してもらえて
俺はうれしかったけど2人は今後二度と体験したくないと言い、
俺とのお出かけは細心の注意を払うか行かないとまで言いだした。
チャンミンにとっては悲鳴を上げるほど怖かったんだろうし
じゅんすは気配だけでも感じたのかもしれない、取りつかれる恐怖もあっただろうしな・・・
でも四六時中この能力を持ってる俺のほうをもっと労わってほしいものだ。


≪後編は明日上がります≫
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